ようやく少し涼しくなってきたため、キノコ探しに繰り出す。
目的地は飯能の奥武蔵自然歩道。
駅から自然歩道まではそこそこ距離があり、途中で寺やら公園やらを通る。
すると路傍で、早々にキノコに会うことができた。
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ムラサキヤマドリタケ!
成長し過ぎて少々グロテスクながらも、色合いはやはり美しい。
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未チェックだった場所でこの美味キノコを見つけられたし(食べないけど)、今日これからのキノコ探しにも期待ができるというものだ。
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さらに奥武蔵自然歩道の入り口のあたりで遭遇した、このキノコの幼菌。
最近探しているキノコとして、ミヤマタマゴタケという地味な色のタマゴタケがあるんだけど、その幼菌ってこんな感じなんだよね。
が、これだけではとても同定はできない。
どうしても気になってやまず、翌日もまた時間を見つけてこのキノコを訪れたので、先にその時のことを書く。
さて、この謎幼菌は何のキノコだったのか。
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結果は……おそらくツルタケ。
各所で見かけるキノコなので、ちょっと拍子抜けしたが、まあ謎のまま終わるよりいいか。
果たして今季中にミヤマタマゴタケに会うことはできるのか。
そしてわざわざここまで二日連続で来たことに対するご褒美のように、このツルタケのすぐそばに、昨日にはなかったキノコが生えていた。
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ムラサキヤマドリタケ。
まだ傘が開いていない若者。
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すぐそばにもう2本。
やっぱりムラサキヤマドリタケは一番かっこいいキノコだと思うな。
そして前日の話へと戻る。
奥武蔵自然歩道に向かう途中、天覧山という低い山を通る。
途中腐葉土のようなものが溜まっている箇所があり、そこにたくさんのキノコが生えていた。
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これはキヌカラカサタケ?
でも『日本のきのこ』によれば、コガネキヌカラカサタケというキノコはあっても、ただのキヌカラカサタケは存在しないみたいだ。
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しかしどう見ても黄金色ではないしなあ。
まあ、謎キノコということで。
天覧山~奥武蔵自然歩道あたりだが、今日は1種のキノコに征服されているような状態だった。
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山の支配者はこのキノコ、コガネヤマドリ。
菌類はいつも水面下で戦いを繰り広げているという話をどこかで見たが、この日、菌ヶ原の戦いに勝利したのはコガネヤマドリだったのだろうか。
遠目でも目立つキノコだし、宝物を見つけたような気持ちになれるのは確かだ。
ネットではこのキノコを食べた人も割と見かけるが、おいしくないという声が多い。
たまに大絶賛している人もいるが。
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しかしとにかく量が多く、後半は結構スルーしてた。
一番最後の写真の個体って完全につながってるんだけど、こういうこともあるんだね。
他にも数こそ少ないものの、数種のキノコが見つかった。
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今日見つかって一番嬉しかったのはこのキノコ、ベニイグチ。
ワインレッドのその姿は、数あるキノコの中でもかなり美しいものだと思う。
前に他で見つけたこともあったが、いつもへなへなになっているものばかりだったので、今回いい状態のものに会えて良かった。
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本当にリンゴみたいな色合い。
美しいだけじゃなく味もいいそうで、味噌汁に入れて食べると美味しいらしい。
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他にこんな地味なキノコも。
コガネヤマドリやベニイグチと同じく、イグチ科のキノコではある。
うーん……ニガイグチモドキ?
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裏面の管孔をこすって変色するかとかで判別もできるが、堂々と生えておりもったいなかったので、抜かずにそっとしておいた。
奥武蔵自然歩道で見つけたキノコはこのぐらい。
これだけではキノコ欲を満たすことはできず、翌日もまたキノコを探す。
前述の通り最初に一度飯能を訪れ、その後同じ西武池袋線沿いにある加治丘陵へと向かった。
加治丘陵は傾斜も多く、また検索すると「加治丘陵 熊」と関連ワードで出たりすることもあり、ビビりのおれは今年はまだ行けていなかった。
結局、いろいろなキノコを見たい欲望が勝ったが。
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そして発見第一号のこのキノコからして、間違いなくおれが今まで見たことのない種類だったので、これは来たかいがあったなと。
これはキクバナイグチ。
ネットや本の情報によれば崖地に生えることが多いようだ。
周辺には崖地なんてまずなく、当分拝むことはできないだろうと思っていたので、予想外の遭遇に興奮。
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ベニイグチに劣らない美しさだ。
ただこれだとあまりキクバナ(菊花)っぽさはない。
これは幼菌だが、このキノコは大きくなると、それこそ菊の花のように、派手な姿へと変貌を遂げるのだ。
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そんなわけで成菌というか、老菌の姿をば。
写真の通り、なかなか高い位置に生えていたので大変だった。
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至近距離で見ると、なかなかすさまじいフォルム。
まあ菊に似ているかというと怪しい気もするけど、この姿を見て、大きく開いた花を想像することは難しくないだろう。
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裏側の管孔部はこすると青変する。
これは元々色が変わっていた。
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また別の個体。
大人になりつつあるキクバナイグチ。
これも果物っぽさがあるね。
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こ……これもキクバナイグチ?
キクバナイグチ群の中に生えていたし、ネットで見るとキクバナイグチの幼菌で、これに似た姿のものもあったんだけど、でも同じキノコにはとても思えない。
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感じたままに書けば、おっぱいに似てると思いました。
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他にも結構あったキクバナイグチ。
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本当にいい色合いだね。
初めて見たキノコながら、おれの中でのキノコ見た目の良さランキング、トップ10には確実に食い込んだ。
さて、ここからはキクバナイグチ以外のキノコをば。
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写真の向きを間違ったのではなく、崖から下を向いて生えていた。
キクバナイグチの傘の部分が完全にはがれてしまった姿かとも思ったが、柄の色も違うな。
これは全然分からないや。
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これも何気に初掲載の、キアミアシイグチ。
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キイロイグチという似たキノコもあるそうだが、名前通りに柄の部分が網足状になっていることで識別ができるらしい。
毒ではないが、食べても美味しくないとか。
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これはイグチ科ではなく、タマゴテングタケモドキ。
タマゴタケのようなポップさはないけど、代わりに凛々しさがある。
ま、毒キノコなのですが。
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大人になって傘が開くとこうなる。
モドキなんて名前のキノコがあるので当然タマゴテングタケもあるんだけど、こちらは色が黄色がかっていてあんまり似ていない。
どちらかというとツルタケに近いかな?
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ちなみに昨日飯能で見たベニイグチもあった。
このキノコはどうも傷みやすいのか、ちょっと年を取るとあっという間にへなへなになってしまう。
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ちなみにこんな面白キノコもあった。
何が面白いって、もちろんそのぺしゃっとした形。
キノコは個体差が激しくて、だからこそいろいろな場所で見ても飽きない。
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これだけだと何とも言えないが、多分ウラグロニガイグチかな?
こんなふうにへなっとした帽子のかぶり方してる人っているよな。
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すでにかじられているこのキノコ。
これもイグチ科だとは思うけど、何だか分からない。
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幼菌もあった。
このキノコ、ふちの部分がそれこそ縁取りをしているかのように白くなっており、ちょっと珍しいなと。
オオコゲチャイグチというこげ茶色のイグチはあるが、これはどう見ても大型じゃないしなあ。
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これもまた崖に生えていたイグチ。
さっきのものと同じ種類にも見えるし、イロガワリというキノコっぽくもあるかな。
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謎キノコが見上げる空。
後に用事があったため加治丘陵にはそう長くいられず、ほぼ入り口のあたりをぶらっとしただけにとどまったんだけど、それでもキクバナイグチを見つけられて楽しかった。
これは近いうちに再訪決定だな。
今回はイグチ科のキノコが多く見つかったが、そういえばこのキノコもあった。
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そう、タマゴタケ。
このキノコはどんな場所で見ても目立つし、気分が高鳴る。
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1本だけだが状態も良く、いいタマゴタケだった。
「森の貴婦人」という異名があるらしいとか、ヨーロッパでは皇帝のキノコと呼ばれているとか聞くが、どちらもちょっと違和感がある。
もっとこう庶民的なかわいらしさが、このキノコにはあるよね。
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最後に、最近読んで面白かったキノコ本の紹介をば。
キノコ本は結構な量読んでるけど、これは他とはちょっと違った観点で、歴史上の文献の中でキノコがどんなふうに語られているかを紹介した本。
平安時代はマツタケよりもヒラタケが重宝されているが、鎌倉以降はもうマツタケ無双。
時の天皇もマツタケ山に登るし、室町幕府の8代将軍足利義政もマツタケを送るし、マツタケを題材とした狂歌の紹介など、もう中盤はほぼマツタケ本と化している。
それは戦国時代になっても変わらずで、多くマツタケエピソードがあったのが、あの豊臣秀吉。
中でも一つ面白い話があって、それは秀吉が多くマツタケが生える山の情報を聞きつけ、奉行たちに「今度マツタケ取りに行くから、他のやつがその山に入らないよう手配しとけよ」と指示をし、奉行たちが向かったところ、すでに他の者によってマツタケは取り尽くされていたという。
奉行たちは悩んだ挙句、他からマツタケを取り寄せ、一夜のうちに山に植えさせておいた。
そして翌日、秀頼はお供の女房衆(ご婦人たち)を連れてその山へと出かけ、自らもマツタケを取って大変機嫌が良かったという。
だが当然後から植えたマツタケは、元々山に生えているものとは抜き心地が違う。
秀吉がそのことに気が付いてなさそうなので、女房衆たちは笑い、うち一人が「そんなこと誰だって知っているのに、さすがの名将が気付いてないのが笑える」(意訳)と口を滑らせてしまった。
すると秀吉は「そんなことは分かっておる。黙れ黙れ」と言って笑ったという、そんな話。
正直最後のオチは、秀吉が激怒して皆殺しにしたとか、絶対そっちだろうなと思いながら読んでいた。
ちなみにイグチやハツタケ、シイタケの記述も多い一方、タマゴタケは多分タの字すら出ていなかった。
派手な赤色のせいで毒と勘違いされ、誰も食べなかったのか。
あるいはそのころは日本には生えていなかったのかな? 気になる。