とある夏の日、ホテルを取って茨城へと1泊のお出かけをした。
茨城の給水塔は独特な形状をしたものばかりで面白そうなのと、何より『団地の給水塔大図鑑』に掲載されている給水塔(つまり日本のほぼ全ての給水塔)の中で、最も気になった1基の給水塔が茨城のものだったというのが、今回目的地とした主な理由。
それに茨城の給水塔は割と密集して建っているようで、自転車でなら二日で全部回れると踏んだのだ。
加えて茨城はホテル代も安い。
まあこれは日にもよるだろうけど、おれが選んだ日は何と1泊4000円足らず。
こりゃあ行かない手はあるまい。
ホテルは水戸で取っており、給水塔も水戸周辺に大半があるんだけど、そっちは二日目にまとめて回るスケジュール。
まず1日目は途中の土浦に立ち寄り、そこの給水塔を見る。
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駅から歩いて10分ぐらいのところにある、レンタサイクルサービスをやってる土浦まちかど蔵「大徳」にて自転車を借り、いざ出発。
ちなみに土浦は自転車の町らしいです。
土浦に到着して初めて知ったんだけど。
完全に給水塔目当てで来ており、他の情報は一切調べていないという体たらく。
まず目指したのは市営大岩田団地。
今考えてみると距離的にはそこまでではなかったが、坂道が多かったのと、あとはやっぱり知らない土地を進んでいると、疲労感も2割増しになるし、遠く感じるよね。
行きはすごく遠かったのに、帰り道はやたら近くて楽に帰れたなんて経験が自分はよくある。
自転車で25分ぐらい走って、目の前に茨城第1号の給水塔が姿を現した。
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頭の部分だけ深紅の色をした、桜木花道のような給水塔。
一見多摩地方によくある円盤型の給水塔っぽいんだけど、こちらのほうがもう少しフリスビー型というか、よりUFO的な形状をしている。
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足の部分は他の円盤型の給水塔と同じ形状かな。
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この日を逃すと次にいつ来られるか。
一生来ないかも分からない。
そう考えると、いつもより多く給水塔の姿を写真に収めておこうと、なかなかiPhoneの撮影ボタンを押す手が止まらなかった。
次の目的地は県営阿見アパート。
距離はそこそこあるが、自転車ならば行けない距離ではない。
が、どうも選んだ道がまずかったようで、散々迷って1時間近く掛かった。
iPhoneの地図があってこれなんだから、こんなの携帯電話がない時代には絶対成立しない趣味だよなあ。
少なくとも方向音痴のおれは無理だ。
まだ夜は遠いが、iPhoneの電池が切れた瞬間いろいろな意味でジ・エンドとなるため、時間の猶予はあまりない。
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坂道を上り、とうとうお目見えした給水塔。
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そう、県営阿見アパートの給水塔は、市営大岩田団地の色違いなのだ。
この形状が茨城のスタンダードなんですかね。
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水色部分はきれいな彩色をされているものの、柄の部分は錆が目立っている。
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土浦で見る予定の給水塔は全部で3基。
残る1基がある町営曙アパートも、実は県営阿見アパートからほどなく近い距離にある。
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というか実は阿見アパートに向かう途中、先に曙アパートの給水塔が目に入ったんだけどね。
まあこの森の奥にありますみたいな感じの見え方をされた時は、絶望感にとらわれたんですが。
でも意外と近かった。
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曙アパートの給水塔もこの形状で、なんとオレンジ色。
とても鮮やかな姿。
オレンジの給水塔は、おそらくこれまで見たことないな。
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はるか空を舞う旅客機が、給水塔の風景へと割り込む。
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今日見た給水塔の中ではこれが一番好きだな。
ここからまた30分ぐらい自転車を走らせて「大徳」まで戻り、自転車を返却。
レンタル代は500円なり。
クロスバイクも1000円で借りられるみたいだったけど、もうすっかりママチャリに慣れた身、このままこじゃれた自転車には縁のない人生を歩もうと思うちょります。
スポーツバイクって無法者みたいな走りをする人をよく見かけるので、あんまりそちらにカテゴライズされたくないなと。
乗り物のスピードをあまり気にしない生き方をしたい。
この日はその後、水戸駅に移動してホテルにチェックイン。
当初の予定だと、店が空いているうちに早々に一人飲みに繰り出すつもりだったけど、水戸に向かう電車に乗っている途中、おれの中に一つの案が浮かんでいた。
それは「夜の給水塔を見に行く」ということ。
夜化粧をした給水塔もまた昼とは違う姿で素敵だということを、都内のいくつかの給水塔を見て知った。
明日は朝から水戸周辺の給水塔をめぐる予定で、終わったら東京に帰るので、夜に給水塔を見る時間はない。
つまり――行くなら今日しかない。
といっても夜はレンタサイクルもないし、せいぜい見られるのは1基程度だろう。
そうなればもう決まりだ。
おれが一番気になっている、市営双葉台住宅の給水塔・夜バージョンを見に行くしかない。
そうしてホテルで一休みした後、再び電車に乗り込んで、最寄の赤塚駅まで移動。
やはり東京とは違うのか、また20時前なのに外はかなり暗い。
団地までの距離は3キロぐらいだったけど、車で通るのを前提として作られたような、歩道が用意されていない道が多く、なかなか怖かった。
目的の双葉台住宅のあたりに近付くと、明かりはさらに減ってきた。
もしも給水塔が真っ暗で何も見えなかったら無駄骨だ。
歩くこと30分。とうとう双葉台住宅へと到着。
果たして給水塔はどのような夜姿(よなり)をしているのか。
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じゃん。
全体的にぼやけてはいるけれど、それでもこれがどのような色形をしているかは分かるはず。
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数多ある給水塔の中で最もサイケデリックかつスペーシーな姿だと思った、双葉台住宅の給水塔。
何を思ってこの色にしたのか。
周囲に明かりは少ないが、この輝かしさは、完全に闇に埋もれてしまうことはないだろう。
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一人飲みの機会をつぶしてまで来たかいがあったというもの。
ド派手な色をした給水塔はやはり夜に一切埋もれることなく、独特な存在感を発揮していた。
もちろんこの給水塔は翌日昼にも訪れたので、果たして昼はどんな顔をしていたのか、乞うご期待。
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その後水戸駅に戻り、夜までやっている店で茨城名物のスタミナラーメンなるものを食した。
ハイボール付きで、ささやかながら結局一人飲み開催です。
一つの皿にカボチャとレバーが同居している感じがなかなか……印象的ではあった。
というわけで給水塔探しは二日目に続く。

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