この世には二種類の人間がいる。
それはーーアミガサタケを食べたことがある人間と、食べたことがない人間だ。
今日、めでたくおれも前者の側に属することができた。
今年はさっぱりアミガサタケに出会えず、そんな中おれも訳あって勉強をやることになり(大人なので)、これからしばらくは探しに行く時間を取れそうもなく、半ばあきらめていた。
勉強は家だけでやっても集中が途切れるので、喫茶店に行ったりしている。
今日も午前中からコーヒーカップを左手に、右手に本やiPhoneを持って勉強していたが、どうも一つの喫茶店に長居するのが苦手なのもあり(コーヒー一杯でこんなに居ていいんだろうか、でもお腹は空いてないしとか、変な葛藤に駆られてくる)、他に移動することにした。
とはいえ次に行く店も決まっておらず、何となしに歩いて他の駅に向かう途中、偶然にも遭遇したのだ。
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イエローモレル、アミガサタケ。
今年も出会うことができた。いびつな姿が愛らしい。
もう今回の遭遇ではっきり分かったね。
アミガサタケは躍起になって探している人間の前には決して出てこない。
深く考えずに散策していると、なぜか視線の隅に姿を覗かせるのだ。
少なくともおれがこの3年で見つけたアミガサタケはみんな、死ぬ気であたりを凝視しまくっても見つかることがなく、忘れたころに姿を現してくれた。
はいはいどうせここもないんでしょ、と思って帰ろうとしたら見つかるとかね。
ほんと、ほとんどこのパターンだった。
上述した通り今年はほとんどあきらめていたので、もう姿を拝めただけでも幸せ、1本だけだとボリュームも足りないし、鑑賞するだけにとどめるのもいいかなと。
そう思わないでもなかったが、周囲を見渡してみると他にも10本近いアミガサタケの姿があった。
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こりゃあ……やるしかない。
アミガサタケ料理を。
狭山丘陵にそこそこ近い場所に引っ越したのも、キノコを採って食べる生活を送るのが何よりの目的だったのだから。
まあ、今回アミガサタケを見つけたのは狭山丘陵とは一切関係ない場所なんですけども。
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というわけで4本ほど新聞紙に包んで持ち帰った。
あきらめていたといいつつ、いつ遭遇してもいいように、リュックの中に新聞紙を入れていたというね。
帰りの電車の中、まるで札束の入ったスーツケースを抱えているかのように、おれはできるだけ人目に触れないように身をかがませていた。
もしも帰路で事故に遭ったなら、おそらくアミガサタケをかばって死んだだろう。
アミガサタケは抜いた後は鮮度がすぐ落ちるそうで、結局勉強も途中で切り上げ、まだ3時台だというのに、早くも夕食を作ることにした。
干すと香りが強くなるらしいが、今回初のアミガサタケ食なので、フレッシュさ、勢いを重視して、その日のうちに頂いてしまおうかなと。
アミガサタケに限った話ではないが、キノコは中に虫がいることが多く、事前に塩水につけて虫出しをするのは必須。
おれ大の虫嫌いで、今回採ってきたアミガサタケは状態も悪くなさそうだし、虫なんているわけがない、いるわけがないと自己暗示をかけながら塩水につけてみたものの、1分ぐらいすると小さな虫が1匹キノコの中から這い出てきたので、熱湯でジュッとやってジャーッと流した。
当然このブログに画像を載せるとか、そんなご無体なことはしません。
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恐る恐る、それぞれのアミガサタケを半分に切ってみたが、幸い他には虫はいないよう。
ちなみにアミガサタケ、微量な毒成分が含まれており、生食は厳禁。
茹でこぼして毒を抜く工程があるのだが、その時も換気してないと気分が悪くなったりするそうで、要注意。
素人がうかつに手を出して当たるのだけは避けたく、ここは事前にしっかり調べている。
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茹でこぼすと、クリボーに当たったマリオみたいに、みんなスモールサイズになってしまった。
さてアミガサタケをどう料理するか。
カレーもいいかなと考えたが、アミガサタケ単体の味が分からなさそうだし、今の料理の腕だとカレー自体失敗して台無しになる危険性があり。
単にバター炒めにしようとかチャーハンの具にしようとか、いろいろ妄想したが、正直ここで失敗はしたくないな、ちゃんと味わいたいなと。
アミガサタケはクリームが合うということで、鳥のもも肉と一緒にクリームで煮込むことにした。
インターネット上の偉大なる先人たちのレシピ、参考にしまくっとります。
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運良く、実力以上にうまく仕上げることができた。
一口目を食べる時はおっかなびっくりだったが、アミガサタケ、これぞキノコ! って感じの、どこかで味わったような風味もありつつ、でも感じたことがない独特の味も半々という感触。
ネットでの感想とか見ると、アミガサタケ単体は味はないみたいな内容もあったりするが、個人的にはむしろ濃厚な味わいのキノコだなと思った。
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最初にアミガサタケ見つけたのは2019年、この年はわずか1本だけだった。
去年は十数本ぐらい見つけたが、まだ食べる度胸がなかった。
2年越しでようやく実食と至ったわけで、感無量ですよ。
また採る機会があったら、次こそカレーやらチャーハンやらも試してみようかな。
早めの夕食を終えて近所の喫茶店にまた勉強に行ったんだけど、達成感にあふれた中でやる勉強、もうめちゃくちゃはかどっちゃったね。